「ドキドキしたの。...たぶん。」
「ドキドキ?」
意を決していったときの京香の顔は不思議そうだった。
そりゃ、私だって驚いてるよ。
でも、でもね。
「恐怖心からのドキドキかもしれないし。」
うん、そうだよ、きっとそう。
それ以外にありえない。
あったら、いけないの。
いけない、私はマスクの女だから...。
そうでしょ?
裕哉?
心の中でそう問うと、
そこにいるはずもない裕哉の声が聞こえた気がした。
「そんなことない、妃稲には幸せになって欲しい。」
...。
できるはずがない。
私は、そんな資格はないんだよ。



