まだ春の兆しも見えないころ俺は一つの命を救った。 その命を救った相手は数日後俺の前で泣き崩れた。 病院のベッドに横たわる俺。 それを見下ろす俺。 ああ... 死んだのか。 それが理解できても意外と冷静だった。 妃稲は誰もいなくなった病室で自分を責め続けた。 「私が死んでいればっ...」 「私なんて生きていても意味がない...」 やめろ、 俺は妃稲のそんな顔が見たくて救ったわけじゃない。