「でも、1回だけだからね?」
「ん。分かった。」
俺は、ゆっくりと美和に近づいた。
そして美和の後頭部に手を回す。
美和は一瞬
顔いっぱいに迷いの色を浮かべた。
俺は
美和が「やっぱり無理」っていう前に
キスしてやろう、なんて
ズルイ事を考えた。
「ん」
お互いの唇が一瞬だけ触れた。
「あ・・・」
「後悔、してる?」
俺は
少し不安気に聞いた。
「ううん。してないよ!」
美和は
顔をあげて笑顔でそう言った。
俺にとって
それは大きな救いだった。
「じゃあね。」
「どこ行くんだよ。」
「翔太んとこ。ちゃんと話してくる。」
「あぁ・・・」
美和は
俺から離れて歩き出した。
「ねぇ。」
「・・・?」
「ありがとね。」
そう言って笑った美和の笑顔は
今まで見たどんな笑顔よりも
どんな表情よりも可愛かった。

