そんな相沢に転機がおとずれたのは、冬のさむい時期。


バレンタインデーのことだった。


世の中の男子があわい期待を抱いては地獄をみせられる、例の行事だ。


僕は毎年そわそわすることもなく、平穏にすごしている。


ただ今年はすこし違った。


「ねぇ、どうしよう、どうしよう!」


相沢が猫のような瞳をきらきらさせながら、僕に抱ついてきた。


「伊藤としゃべっちゃった!チョコレート渡しちゃった!」


僕の胸元で、相沢は興奮している。