「開かれた人というのは、そのしがらみを
マイペースで努力して開いていく人のこと
です。そういう人たちに囲まれていると
幸せだとは思いませんか?」

「それは、そう思いますが。もしそうでなければ?」

「やはり、皆が傷つきうまく行きません。一人でも
そうでない人がいれば。特に親兄弟親戚の理解が最重要
でしょうね。私達の所は積極的に応援してくれます」

「でもあなたの恋人はそうではなかった」

「今では恋人でも何でもありません。彼女の両親は猛
反対をしました。日本でもそういう人は多いですか?」

「そうですね。そのほうが多いでしょうね。特に親に
してみれば。開かれた親は希少価値があると思います」

「苦しい心の葛藤」

「そう思います。それでも戦う姿勢があれば、二人で
力をあわせて何とかなるとは思いませんか?」

「一度しかない人生」
「そうそのとおり。一度しかない人生」

二人はそこで声を立てて笑った。


四条通を烏丸まで歩き地下鉄で京都駅へ向かった。
二人は新幹線のホームで名残を惜しむ。

列車到着のアナウンスがなると孔明は内ポケット
から小箱を取り出した。静江はびっくりして見つめる。

孔明は箱を開けて中の指輪を静江の薬指にはめた。
列車が入ってくる。孔明はグッドと右手の親指を立てて
ウィンクをする。列車の扉が開き人が降りてくる。

発車のベルがなる。孔明は白い封筒を静江に手渡して
列車に飛び乗った。

「後でゆっくり読んでください。さようなら」
「わかりました。さようなら」