静江はゆっくりと歩いて双橋の北詰に来た。夕陽
が雲間に沈んでいく。淡い光の影が水郷全体を
何事もなかったかのようにやさしく包んでいる。

逢源双橋は2つの橋げたが並行してかかっている。
何故そうなったかは分からないが、静江はその
中央でずっと沈む夕陽を眺め続けていた。

翌日は午前中にかなり広大な西景区を見て、夕方
染物工場へと向かった。奥の庭に着くと王姉妹が

喜んで迎えてくれた。二人とも涙して両手で
静江の手を握り締めてくる。

昨日の手帳の内容が分かったんだ。そう思って
こちらももらい泣きしながらふと気がつくと、

奥の部屋の入り口に、背の高いハンサムな青年が
立ってじっとやさしくこちらを見つめている。

視線が合って軽く会釈をすると、姉妹は始めて
気が付いて美麗さんが私の息子だと紹介した。