病院の看護師が同じ病室の俺ら子どもに 甘いお菓子を配ってくれたことがあった。
キャンディやチョコレートがどっさり。
ハロウィーンのように仮想しなくても クリスマスのようにお願いしなくても なぜか看護師は俺らにお菓子をくれた。
それすら 俺だけのためだと思うほどだった。
年を重ねるたびにそんなの忘れていったが。
死んでここに来て じいさんになついた俺は じいさんがすごい人だというのを知っていた。
だからじいさんの近くにいつもいた。
じいさんみたいな偉い王になりたいって 幼い頃の感覚がよみがえった。
だが 王になるには自分を捧げることだって知らなかったんだ。
知ってからずっと じいさんのそばにいたのを後悔していた。
自分を捧げるだって!?
そんなのするわけないじゃないか。
だけどみんなは 俺が次期の王になると思い込んでしまって 発表なんかしてないのに。
それ以来俺は 王になるのがいやになった。
怖いし何より自分を見知らぬみんなのために犠牲にしなくてはならない。
星にならずちりになる。
ちりだって 有り得ないだろ。
そんな俺の意識が変わり始めたのは 確かにこの頃だった。

