ある寒い日の朝。
辺りには霧が立ち込めていて 空を覆う厚い雲が まるで世を支配したかのように 不気味な色をしていた。
少女はいつもより少し早い目覚めだった。
髪をすいて パジャマから着替える。
肌を刺す冷たさが 少女を身震いさせた。
その日の少女は どこか様子が変だった。
クローゼットから無理矢理コートを出し ついでにマフラーも手に取った。
ベッドの布団を直さず 少女は部屋を後にした。
階段を降り キッチンに顔を出すと 柔らかなオレンジの髪を揺らしながら 少女の母が優しく振り返った。
「あら、今日は早いのね。」
少女の返事を待たずに母が続ける。
「今日の天気は最悪よ?お昼前わ吹雪らしいわ。今日は外出を控えた方が良さそうね。」
少女が席につくと 当たり前のように温かなココアが出てくる。
「昨晩はひどく冷えたでしょう?」
「…えぇ とっても。」
どこか弱々しい声に 少女の母は顔を曇らせた。