あのこになりたい

「お父さんがね…私が小学生の頃、若い女の人と不倫してたんだ」



シュンは頷きながら話を聞いてくれた。



「実際に見たこともある。女の人と親しげに寄り添って路上でイチャついてる…男の顔したお父さんの姿を」


私は思い出すとゾッとした。



「あの日からお父さんも男の人も気持ち悪くて、なんか怖くて…」


小学生の子どもの頃の感覚で感じた嫌悪感はこの年になってもなかなか薄れない。


「今なら…ショックだけどトラウマとまではならなかったかもしれない。あの頃の私は子どもで…強く信じてたから、お父さんのこと」


シュンは静かに頷いた。



「辛かったんだな…。本当にさっき大丈夫だった?」


後悔してそうなシュンの顔。



「大丈夫だった…温かかった…」


シュンと一瞬目が合って変に照れてしまってすぐ視線を外した。