「あなたは黙ってて!今まで子どものことほったらかして…」


また始まった。


「遅刻しちゃうから…行くね」


私は、カバンを持って玄関へ向かった。


高校生にもなると、まともに親の言うことを聞かなくても、『そんなものだ…』とある程度諦めもつくらしく昔ほどではなくなった。

特に兄の事件があってからは。


兄は、こもりっぱなしで以前の面影はすっかりなくなっていた。


清潔感あふれる以前とは別人のように伸びたままのヒゲ。


ボサボサの髪。


うつろな瞳。


家族で唯一兄が話すのは私。


それでも週に2、3回話せばいい方だ。