あのこになりたい

「お兄ちゃん!」


兄は座り込んでおなかを抱えて笑っている。



「早くお母さん止めて」


私はリモコンを振った。



兄はリモコンからストップボタンを見つけ出し押した。



「びっくり…した」


母は髪が乱れて顔も乱れている。



意外な一面を見てしまった…


しばらく3人で笑い続けた。


私はマッサージチェアに座って母の珍事件の前の綾のことを考えていた。



付き合うってことは…


綾と幸輔がデートしたり、キスしたり…もしかするとHとか…?



私は頭を振った。



どうしていつも綾ばっかり。


優しいお母さんに、自分が好きなテニスにたくさんの友達に幸輔に…


私が持ってないものばかり。


私が欲しいものばかり持ってる。



中でも幸輔は…


あの日の二人の後ろ姿を思い出しながらまた胸が痛みだして涙目になった。