あのこになりたい

私は綾が幸輔の名前を出す度イライラして、そのうち泣きたくなってきた。



綾の家から帰ると母が見たことないイスに座って揺れていた。



「何してるの…?」


私の声に母は少し驚いて、


「お〜かえり〜」


と声まで揺らしながら言った。



「マッサージチェア?」


母が座ってるのはまさしくマッサージチェア。



「お母さんのへそくりで買っちゃった」


へそくりって…いくらしてたんだよ。



「すごーい!やりたい、やりたい」


母は起き上がろうとした時にリモコンに触れたのだろう。


高速で母が揺れ出した。



「ちょ、ちょ、ちょっと〜〜と〜め〜て〜〜」


私は笑い過ぎて涙を流しながら母の動きを止めるためリモコンを探した。


母のお尻に敷かれたリモコンを掴んだ瞬間、


「ぶっ」


え…?


「お〜ならじゃ〜ないわ〜よ〜」


後ろで笑い声がした。