あのこになりたい

シュンが兄を迎えに来て、髪を切りに行ったのは梅雨が明けてすぐのことだった。


陽射しがきつい7月。




期末テストも終わって私はひとまずホッとしていた。


「若菜さんに会うの?」


私は兄が髭を剃って着替えた姿を見ながら言った。



「うん。髪切ってから。ほんとは、人が少ない平日がよかったんだけど…学校があるからって。土曜になったんだよ…」


兄に会いにシュンはちょくちょく家に来たが、母はあまり歓迎しなかった。



「若菜さん…会ってみたいなぁ」


私が言うと、


「そのうち連れて来るよ」

そう言って少し笑った。



「有田とは会ってないの?」


兄が聞いてきた。



「家でこの前見た…でもあれから外では会ってないよ。もともとお兄ちゃんに用事があったんだから…」


私はシュンと一緒に話した帰り道を懐かしくすら感じた。


ピンポーン


「あ、来たんじゃない?」

兄が階段を降りるより先に母が玄関を開けた。