あのこになりたい

梅雨は嫌い。


薄暗くてジメジメして蒸し暑くて。


私の心もこんな感じだろう。


幸輔と会えないもどかしさで毎日朝からイライラする。



「雨じゃ…朝練はないのか」


私は一人呟いた。



夕方になるとすっかり暗くなってカーテンを閉めようとした…その時。


「シュン…?」


シュンが玄関に入っていくのが見えた。



私は部屋を出て階段の途中まで降りた。


母の声がする。


「もう文康のことはそっとしといて欲しいのよ…お願いだからもう来ないで…」


シュンの声だ。


「ご迷惑かもしれませんが…」


シュンが咳ばらいをした。

「岡田くんにどうしても伝えたいことがあるのでお邪魔します!!」


シュンは階段を駆け上った。



「えっ!」


私はその勢いに押されて階段を上った。


ガチャッ


シュンは兄の部屋のドアを開けた。



「岡田!ゲーム面白かったか?」


お兄ちゃんは呆然としている。



「有田…おまえ、何やってんだよ?」


お兄ちゃんはシュンに近づいた。