あのこになりたい

知ってるし…


「この前階段で滑っちゃって…そしたら幸輔が支えてくれて。もうヒーローだよ」


綾の話に私は泣きそうになるぐらい胸が痛かった。



「人が感激してるのに『前の荒井だったら支えれなかったな…』とか言うんだよ。ひどいよね」


綾が笑えば笑うほど、私は不愉快になっていった。



無口な私に気付きもせずに綾はペラペラ話し続けた。


こういう無神経なところ大嫌い…


昔から人の気持ち踏みにじっても気付かず平気で笑えるような子だった。



用事があるからと言って早めに帰った。



幸輔のアドレスを綾に聞くのはプライドが許さなかった。


もしも綾が幸輔になんかしたら二人は…


隣の席なんて、ずっと一緒にいるようなもんだし。


私はその夜、なかなか寝つけなかった。


綾の家の綾の部屋をただじっと睨んだ。



まるで子どもだ…そう思いながらも綾の部屋に向けられた視線はなかなか外すことができなかった。