あのこになりたい

「でも、社会に出るの早まりそうなんだ」


兄の言葉に母が、


「どういうこと?」


顔をしかめた。



「父さん、母さん本当にごめん。今まで引きこもり続けて心配かけて…。その上こんなお願いして本当に申し訳ないけど…」



兄は床に膝をついた。


太ももの上で手にギュッと力を入れたのがわかった。


「守らないといけないものができたんだ。若菜と若菜のおなかにいる俺の子ども。だから働いて、家庭を持とうと思ってる。覚悟は決めたから…」


兄の言葉に父も母も固まっている。



「未熟な俺だけど、一生懸命頑張るから。頑張って二人を守っていくから。認めて下さい。」


兄は頭を下げた。



「文康!あなた自分が何したかわかってるの!?」


母のヒステリックな声を久しぶりに聞いた。



「今までどんな思いであなたを育てて来たと思ってるの?どうしてこんな…。若菜ちゃんだってこれからの可能性をたくさん持ってるんだから…無理して産まなくてもいいでしょ?」