涙が途絶える日まで


ふと空を見上げる。

灰色の空が一面をおおっている。

少し向こうの空は晴れてるのに。


『雨…ふりそう。』

そんなことより!

5分遅刻だあ…

やばいやばいっ

また小さめの道をくぐり抜けた。

「おう。」

『彩…部。もうきてたんだね』

早い…って

普通か。

『あの…はいこれ。』

この前借りたダウンを手渡しでかえす。

『ありがとね。』

「おう。」

『つめたっ』

ぽつぽつぽつぽつ

雨が降り始めた。

ミストのように薄く、優しい雨。

「うわっ最悪。ちょっときて!」

『えぇっ?』

手を引かれるまま彩部についていった。


彩部が入ったのは

誰かの家…の車庫。

『いやいやダメでしょここ』

「お前かわってねぇなっ」

ふはっと笑う彩部。

私のことで笑ってくれた…

私をみてくれた。

それだけでうれしかった。

涙がこぼれそうになるのをこらえて

上をむく。

『ひゃっ!』