涙が途絶える日まで



「…最低だな」

私のことかな。

自分のことしか考えないから

彩部から嫌われちゃった…。

自業自得だよ。

彩部は

わかばちゃんとは別れると思う。

ただこの状況じゃ

私のことも好きにならないだろうな。

えへへ、やっちゃった。

なにしてんだろ私。

好かれたかったのに、

また付き合いたかったのに。

『ごめんね…ごめん』

ただわかばちゃんが許せなかった。

彩部と付き合っていながら

別の男とも…

彩部もそのときいた男も

かわいそうだ。

「は?」

彩部が…怖い。

『わ…っ私…』

「お前には感謝してる。」

『…っえ?』

「なんとなく分かってたけど
マジだと思わなかった」

『私がいわなければ…っ』

「言ってくれなかったら
俺は何も知らないままだったよ」

でも…

「ありがとな。」

そう言って私の頭をぽんってした。

嬉しかった。

「帰るか。」

『…ん。…っ!さむっ』

「わりいな。
こんなことしかできねぇ。」

え…?

彩部の匂いがする。

私を包み込む温かい

彩部のダウンコート。

『寒くないの?』

「俺彼女いるからさ。ここまで。」

『うん。』

「だけど俺が
そのダウンかした理由、勘付け。」

『…うん』

貸してくれた理由なんて

全くわからないや。

「…。」

『じゃあ…また。』

「おう。」

私はこれまでのことを

思い出して泣きたくなった。

だから

すぐ彩部に背を向けて

上を向きながら歩いたんだ。

やっぱり送ってくれないんだね。

景色がゆがんで目の前が見えなくなった。