内田くんと話し込んでいて周囲の様子が見えていなかったけれど、気づけば教室は閑散としている。

「…私も帰ろ。」

何だか気が抜けて、内田くんが出ていったあとを追うように気だるい足取りで教室を出た。

「…内田くん、ちっさ」

私のだいぶ前を歩く黒髪の彼は遠距離であるからか、はたまた本当に背が低いからか、とても小さく見えた。

大学の入学式。

今日はなんだかいろいろなことがあった。

朝っぱらから知らない男に怒鳴られるわ、幼なじみと再開するわ、イケメンに気に入られるわ。

平凡な大学生活は果たして望めるのだろうか?

「…ま、いっか」

私は今日の記憶を辿りながら消え入りそうな小さい声で呟いた。

平凡だろうが、非凡だろうが、どっちだっていい。

非凡なら非凡で、面白いかもしれない。


こうして私の大学初日は終わりを迎えたのだった。