暫くたっても、ルルの悪夢は一向に良くならなかった。
「・・・・・」
ユエにジルバに心配させないように、元気なフリをしていた。
頭の中に聞こえる声は昼間も聞こえてルルはつらかった。
「ルル様?」
ジルバが声をかけても気づかないこともあった。
どこまでが幻聴なのかルルはよくわからなくなっていた。
「ルル様?」
何回か声をかけるとルルはハッとしてジルバに笑顔を見せた。
「ごめんなさい。ボーとしてたみたい。」
ジルバに向けられた笑顔は本物ではないことをジルバはわかっていた。
「・・・ルル様?大丈夫でございますか?」
「え?ルルは全然元気だよ??」
無理に笑うルルが日に日に弱々しく見えることをジルバは一度聞いてみたが、はぐらかされてしまった。
「・・・さようでございますか。本日はユエ様がお帰りになりますので夕食はご一緒のお時間になります。」
ユエは最近前に増して屋敷にいない時間のほうが、屋敷にいる時間より長かった。
ルルは笑顔で頷いた。
忙しいユエは少しイライラしていて怖い。
表面は優しいけどブラウンの瞳が優しくない。
ルルはその瞳が怖かった。
隠そうとしていることすら見破られてしまいそうだったから。
それにユエの追求は逃げられない。
「ルル?」
ユエが帰ってきた。
ルルは笑顔でユエに抱きついた。
「おかえりなさい」
「良い子にしていたかい?」
ルルは頷いた。
食事をしていてもニコニコと笑うルル。
ユエに聞かれないことでバレていないと安心していた。
食事が終わって部屋を出ようとすると、ユエが耳元で囁いた。
「どうして無理に笑っているの?」
ビクリとルルは固まってしまう。
やはりユエにもバレている。
「・・・無理に笑ってなんかいないよ・・・?」
「嘘つき」
優しく笑ってそう言ったユエの瞳が笑っていない。
怖い。
ユエは軽々とルルを抱き上げた。
「ユエ・・・自分で歩ける・・・!」
「・・・」
何も言わないユエ。
頭の中に聞こえる声は強くなる。
耳を塞ぎたい。でも塞いでも聞こえなくはならない。
ルルはユエの部屋のふかふかのソファーにおろされた。
「・・・ユエ・・・・」
ルルは震えていた。
これが夢なの現実なのか。目の前にいる優しくないブラウンの瞳がルルを混乱させていた。
「・・・ルル?」
ルルは耳を塞いだ。
頭の中に聞こえる声が強すぎてルルはおかしくなりそうだった。
ルルは何も言わないで震える。
「・・・ルル・・・そんなに強く唇を噛むんじゃないよ・・・」
優しくルルの耳から手を離してそう言った。
「・・・ユエ・・・・」
「・・・まだ何か聞こえるんだね?」
否定を許さない強い瞳がルルを捕まえる。
だが、優しくないブラウンの瞳ではない。
「・・・」
弱々しく頷くルル。


