馬車に乗ったルルは大きく震えていた。
「・・・ルル?寒い?」
「・・・」
ルルは無言で首をふる。
ルルは母親に言われた言葉がずっと頭の中で響いていた。
耳を塞いでも頭の中でずっと響く言葉にルルは震えた。
「・・・」
ルルが不幸に・・・家族を不幸にした・・・・。
ユエは黙って震えるルルを膝に乗せた。
「・・・ユ・・・ユエ・・・」
「大丈夫だよ。大丈夫。」
ユエはルルを抱き締めて背中をさする。
「・・・」
ルルは屋敷に帰ると直ぐにお風呂に入れられて、出ると暖炉のある部屋に連れていかれた。
パチパチと燃える炎をただ見つめていた。
少しするとユエがお風呂からあがってやってきた。
ただ炎を見つめるルルの瞳が悲しみに満ちていた。
「・・・ルル?本も読まずに何をしているの?」
「・・・ぁ・・・ユエ・・・」
ルルは少し笑う。
「・・・暖炉温かいね・・・・」
ルルはポツリと一言だけ言うと黙ってしまった。
ユエはそんなルルを心配そうに見つめた。
その日からルルはユエの屋敷に来たばかりの頃のように、無口で無表情のことが増えた。
「・・・」
天気の良い日はジルバが外の庭に連れ出すが、一日中ずっと庭を見つめるだけ。
「ルル様・・・?お飲み物は?」
「・・・いらない」
ユエは最近仕事で屋敷開けていた。
ルルは毎日毎日同じ夢を見た。
「・・・・」
母親に言われた言葉。今まで言われ続けた言葉。
寝起きはいつも良くなかった。
「ルル?果物は何が食べたい?」
久しぶりにユエが一日中屋敷にいる日。
ユエはルルに果物を出していた。
「・・・いらない・・・」
何をしてもルルは興味を持たなかった。
どうしたものか、とユエがため息をついた。
すると、ルルはビクっと反応した。
「・・・・ユエ・・・・ごめんなさい・・・・ごめんなさい・・・・」
いきなりルルがユエに謝りだした。
「・・・ルル・・・?」
「・・・ごめんなさい・・・・ごめんなさい・・・」
ユエはルルを抱き上げた。
「どうしたの?ルルは謝ることした?」
「・・・だって・・・・ルルは・・・不幸にするって・・・・いらない存在・・・・だって・・・・ユエにため息させた・・・」
「・・・ルル?ルルは不幸にもしないし、いらない存在じゃない」
「・・・でも・・・」
ユエはルルの口の前に指をそえる。
「でも、じゃない。」


