血が吸えない吸血鬼。




ユエ・・・。



高熱から潤んだ瞳から涙が流れる。



頭が割れるように痛い。



ユエは来てくれない。



・・・。



開かないドアを見つめていると悲しくなる。



すると、ドアが静かに開いた。



「・・・・ユエ・・・」



弱々しくユエを呼ぶ。



「起きていたの?辛いだろうに。」



ブラウンの髪が揺れる。



ユエはベッドまでくると、ベッドに腰をおろす。



ルルは上半身をユエに近づける。



「ルル・・・これから数日間屋敷を開けるけど良い子にしててね。」




「え・・・ユエ・・・いないの?」



「少し仕事がね。」



「・・・うん。わかった。」



ユエはルルの髪を撫でると、ルルの顔に手を添えて頬に唇を落とした。



「・・・じゃあ、行ってくるから」



「・・・・」



ルルは顔がさらに熱くなって頷くことしかできなかった。



ユエが部屋からでるとルルはベッドの中で眠りについた。



ジルバが食事を運んで来るときと着替えをしてくれる時以外はずっと一人でベッドにいた。




「ルル様、お飲物はいりますか?」




「今は・・・いらない・・・」



ジルバがテキパキ働く様子を見るど一緒にいでなんて言えなかった。




「・・・」



ジルバが毎日庭から花を運んでくれた。



ルルの熱はなかなか下がらない。



少しずつ熱は下がってきたが、貧血で顔色が悪い。



「・・・」



そんなある日。



慌ただしく部屋のドアが開いた。



「お辞めください!」



ジルバが必死に阻止しているが、全く気にすることなく綺麗な女の人は進んでくる。




「・・・」




ルルは動けない体を震わせた。




「出来損ないにアタシが負けているなんて許さない。」




怒りに満ちた瞳にルルは震える。



「お辞めください!!」




「五月蝿いわ!召し使いは黙って!!お前たち、捕まえておきなさい」




女の人に突き飛ばされるとジルバは女の人の召し使いに捕まえられた。




「こんな貧弱な出来損ないのどこが良いのよ!!」



ドン!と肩を押されてルルはベッドから落ちた。




ルルは訳も分からず上半身だけを起こした。




「あら?歩けないのかしら?」




怖い笑みを浮かべながら近づく女の人。




「・・・ぁ・・・・ユエ・・・助け・・・」




震えながらユエを呼ぶルル。




その様子に女の人はさらに激怒してルルを突き飛ばした。




「出来損ないのくせにユエ様を独り占めなんて許さない」



「・・・・きゃ・・・」




「アタシのほうがユエ様を満たしてあげられるのに!」




バシバシとルルは叩かれる。




「・・・・助け・・・て・・・・・ユエ・・・・」




「五月蝿いわね、耳障りなのよ」




「ルル様!!」




ジルバは必死にもがく。




「あぁ、そう言えば。奴隷管理人があなたの血は格別だって言っていたわね。」



その言葉にルルは震え上がる。




「・・・・ゃ・・・・嫌・・・・」




「味見させなさい。」




首筋に這う舌のねっとりとした感覚にルルは恐怖に溺れる。




「・・・・ぁ・・・・ゃ・・・・・・」




声も言葉にならない。




ズブッと牙が肌に突き刺さる痛みに血を吸われる痛み。




「・・・・ぁぁ・・・・」




「甘い。甘い。」




ルルの血を飲みだした女の人は正気を失ったように血を貪りだした。




ルルは抵抗する力もなく徐々に意識が遠退いていた。




「ルル!!?」




そこにユエが息を切らしてやってきた。




タオもいる。




ユエは女とルルを引き離した。




ルルは力なくユエにしがみついた。




「・・・・・・・」




しがみついたルルは震えて泣いていた。




「ルルごめん。ごめんね。」




ユエがルルを抱き上げる。




ユエが冷たい瞳で女を見下した。




「勝手に屋敷に入った上に俺のものに手を出したな。許さない。」




「・・・ユ、ユエ様が!!出来損ないしかみないのが行けないのです!!」




そこに警察がきた。




女たちは連れて行かれた。




ルルはまだ震えていた。




「・・・ルル・・・もう大丈夫だから」




「・・・ぅ・・・ん・・・」




言葉にできないほど震えるルル。




ユエはジルバに手当てと着替えを頼んだ。




「・・・なあ、ユエ。」




「なんだ。」




「血の香りやばくね?良く耐えられるな。」




タオの瞳は紅くなりつつあった。




「・・・ルルさえ望めば吸血鬼にするんだがな・・・」




床に垂れたルルの血を見ながらユエは呟いた。