「ルル様は何もご存知なさらないようなのでこの世界の身分からお教えいたします」



「・・・はい・・・」



「この世の中の頂点は王で在られる吸血鬼です。その下として有力吸血鬼がいます。ユエ様もその一人です。それから一般的な吸血鬼。そして最下位が奴隷。」



ルルは奴隷と言う言葉にビクリと反応する。



「奴隷は出来損ないの吸血鬼とその他の低劣な生き物です」



ドクドクと体が焦る。



奴隷。



脳裏に浮かぶ奴隷の仕事。



痛い思い。



「・・・ルル様は普段から瞳が紅いと言うことは・・・低劣な吸血鬼ですね、そんな吸血鬼が有力吸血鬼のユエ様の元に・・・ねぇ・・・」



瞳が紅い・・・。



確かに今まで瞳が常に紅い吸血鬼は見たことがなかった。



「・・・低劣・・・」



「この世で低劣な者がこのような優雅な暮らしをするなど聞いたことがありません」



「・・・」



何も言えなかった。



ルルはどうして奴隷だったのか知らなかった。



どうしてここに来たのかも良くわからないのに・・・。



「ユエ様にお触れになるのはやめたほうがいい。ユエ様が汚れますから」



汚れる・・・・。



出来損ない、低劣・・・・。



「奴隷は奴隷らしく生きているだけ喜んでいれば良いのです。」



・・・・。



生きているだけ喜んでいれば良い・・・・?



あそこは死にたくなる場所なのに・・・・。



「・・・ュェ・・・」



バン!と机に本が叩かれた。



「きゃ・・!!」



「・・・奴隷の身分の出来損ないがユエ様を呼び捨てにするなど許されない」



「・・・ぁ・・・すいません・・・」



「今後は"ユエ様"とお呼びするように、あと敬語。低劣な者も敬語はわかるだろう?」