「なんでもない・・・・なんでも・・・ない・・・」
ルルは震えて泣き出した。
「ルル・・・」
短くなった髪から覗く首筋にはまだ治りきらない吸血された痕が残っていた。
「ごめんね、痛かったよね。」
首筋に舌を這わせるユエ。
「っ!?・・・やっ!やだ・・・ユエ・・・」
ルルは必死に腕の中から逃げようとする。
「怖い・・・やめて・・・ユエ・・・・!」
怖い、ルルの言葉を聞いてユエはハッとした。
ルルはただ恐怖に怯えて震えていた。
「・・・あっ・・・ユ・・・ユエ・・・ごめんなさい・・・」
ユエがルルを見つめるとルルは必死に謝る。
ユエに対してのルルの感情は恐怖が多くなっていた。
「・・・ユエが・・・怖い・・・んじゃ・・・ないの・・・ごめん・・・なさい・・・怒らないで・・・」
凍傷の痕が残る腕をルルはユエから隠れるように顔を隠した。
「・・・」
ユエは静かにルルをベッドにおろした。
「・・・ルル、ごめん。ルルは俺の姿が見えないほうがいいのかもしれないね」
そう言うと悲しそうに笑ってドアへ向かって歩く。
「・・・ユエっ・・・待って・・・」
違う・・・・。
ルルはユエに・・・会いたかったのに・・・。
「待っ・・・」
手がベッドから滑り落ちる。
そのままベッドから落ちる。
ドスン。
「痛・・・」
足が動かないルルは立ち上がれない。
「・・・違うのに・・・」
ルルはユエを追えない。
「ユエ・・・ユエ・・・・」
・・・あ、ルルは腕がある。
ルルは脚を引きずりながら腕で進みだす。
「はぁはぁ・・・」
部屋のドアまでが長かった。ルルは息を切らしながらドアへ手を伸ばして開けた。
廊下に出ると身震いする寒さだった。
「寒い・・・」
それでもユエの部屋を目指してルルはゆっくり進んだ。


