砂埃が立ち込める中からコツコツとヒールの音が響く。
「ユエ、怒らないでよ」
高く透き通るような声が聞こえる。
「フィリ・・・」
ルルを抱きしめていた腕が緩む。
ユエがフィリと呼んだのは、高級吸血鬼でユエの元婚約者。
光る銀色の髪に美しい容姿は有名だった。
そんなことを知らないルルはただフィリの姿を見ていた。
・・・綺麗な人。
思わず見とれた。
「あなたが珍しい子をかくまっているって聞いたから・・・あら」
フィリの銀色の瞳がルルを映す。
「金色の髪に鮮やかな赤い瞳・・・あなたね。」
ルルは何となく怖くなってユエの後ろに隠れた。
「あらあら、怖がりね。」
クスクスと上品に笑うフィリ。
「・・・」
ユエは何も言わずにフィリを見つめた。
ユエはフィリにフラれていたから。
今更何を・・・・。
「・・・ユエ・・・」
くいっとルルがユエの服を引っ張る。
ユエはハッとして我に帰る。


