奴隷が働く場所に有力吸血鬼が視察に来た。




その日彼女は貧血だった。




フラフラと仕事をしていた。




「・・・」




鮮やかで透き通るような紅の瞳が霞んでいた。




足枷の重さに中々歩けない。




列になって運び物をしている途中、荷物を落として転んでしまった。



列全体のリズムが崩れる。



貧血の彼女の背中に鞭で叩かれる。



「早く立ち上がれ」




何回も鞭で叩かれた彼女はついに倒れた。




「・・・ぉ・・・許し・・・くだ・・さ・・い・・・」




渇いた唇を小さく動かして絞り出した声。




何とかして立ち上がると荷物を持って歩きだした。




「・・・」




視界が霞んで覚束ない足取りだった。




ドン、と誰かに当たって倒れる。



「女!!!奴隷の分際でユエ様にぶつかるとは!!」



視察に来ていた有力吸血鬼の付き人が怒鳴る。



彼女は蹴られた。




すると付き人が剣を抜いた。




彼女は剣が見えているのかわからないような瞳で有力吸血鬼と付き人を見つめていた。



「待て。」



艶やかな声が響いた。



有力吸血鬼が彼女の元に歩く。



「・・・・」




首筋に出来ていたいくつもの吸血の跡。




焦点の合っていないような瞳。



「奴隷への吸血は禁じられているはずだが?」



奴隷管理職の吸血鬼に艶やかに言う。



「・・・お許・・し・・・く・・・ださい・・・」



彼女は弱々しく言ってフラフラと立ち上がろうとしたがもう立てなかった。