ここは吸血鬼が支配する世界。



吸血鬼はお互いに血を求め合う。



吸血鬼の世界は位がしっかりと決まっていた。



上は王。



下は奴隷。



奴隷は出来損ないの吸血鬼、その他の劣っている生き物たち。



そんな奴隷の中に、一際目立つ少女がいた。



瞳が鮮やかで透き通るような紅。



普通吸血鬼は血を吸う時以外瞳は紅にならない。




身体は華奢でストレートの金髪。



奴隷には名前などなかった。




彼女は元々有力吸血鬼家に産まれた。



しかし、彼女は血が吸えない吸血鬼だった。



牙が生えていなかった。



それを知った彼女の夫婦は家の恥だ、と彼女を奴隷に売った。



彼女の紅い瞳は光りを失ったようだった。



ボロボロの奴隷服を着て一日中男と同じ労働を課せられる。



そして寝る時間が彼女にとって1番の苦痛だった。



夜な夜な奴隷管理職の吸血鬼に血を貪られる恐怖。



牙が首筋に刺さり込む痛みに血が吸われ続ける恐怖。



彼女は怯えていた。



このまま歳をとって邪魔になって殺されて死んでいくと思っていた。



そんなある日だった。