コンビニに寄ってみたものの、パンを一つだけ買って終わった。

あんな話の後だから、これと言って食べたい物も食欲も無い。


結局そのパンだって小さく二口ほど食べて嫌気がさした。


手には今だ開けられていないコーラの缶が握られていて、俺はそれを額に当てながらベットに寝転んだ。



「お前、泣いてんの」



その声を聞いた瞬間、俺は反射的に体を起こした。椅子には又してもあいつの姿がある。

死神だ。



「また、あんたか」

「また俺だよ」



奴はニヤニヤしながら答える。もう奴の憎たらしい笑いにも慣れた。



「残念だなぁ」


ちっとも残念そうに聞こえない。



「何が?」



俺はこの人生で1番不機嫌な声と顔をして奴に尋ねた。


奴はニヤニヤしながら「何が残念かって?」と言うと続けた。



「お前が死神になればあの女を助けてやれるのになぁ、残念だよ。」

「残念そうには見えないんだけど?」



だが奴は俺の反論を無視して続ける。



「けどお前は死神になりたくないんだって?もったねーの」

「……何が言いたい」

「テストを受けろ」



奴はそこだけ真面目に言うと、またニヤニヤとあの笑みを浮かべる。


俺は一つため息をつくと「嫌だ」と答えてまたベットに寝転ぶ。死神はどうも納得がいかない様子だ。



「何故だ? 女を救えるってのに何故テストを受けない」

「それじゃまるで、姉さんが死ぬって認めたいじゃないか」



俺は無理に笑う。部屋にはしばらく沈黙が走った。



「認めてるくせに」



俺は奴のいつになく真剣な声に顔を上げた。


「認めてなんかない」

「認めてるね。お前が認めようとしてないのは、すでに女の死を受け入れようとしてる自分自身の方じゃないのか?」



死神は俺に差していた指を下ろすと、苛々とため息をついて腕を組む。

俺は返す言葉も無く、奴から視線を外す。


「いい事教えてやろうか?」


俺はその言葉に外していた視線をもう一度死神に向ける。