「アツい アツい……あーもぅ、俺アツくて死んじゃいそう」


死神は顔の前で手をパタパタと扇ぎながら嫌みったらしく言った。

まったく死神のくせに何言ってんだが。



「ったく熱いね、お二人さん。温暖化してるんだからちょっとは控えろよ」

「アツいってそっちか!!」



何だか本当に顔が熱くなってきた。



「どうしたの? 椅子に向かって怒鳴ったりして」



死神が見えない姉さんには当然の反応だ。


そしてこの状況を姉さんにどう説明したらいいか分からずしどろもどろになる、そんな俺を横目でケタケタと笑いながら見ているこの死神の、なんと憎たらしい事か。

ぶん殴りたくなってくる。


「外行って涼んでくる」


何となくいたたまれなくなって、俺はそそくさと病室を出た。


むろん、俺の後をあいつがついて来ないわけがない。


勿論やつは俺の後に続いて病室を出た。そしてその後も何食わぬ顔で俺の後ろを歩く。


俺はわざと人目のつかない廊下に行くと、近くにあった腰掛けに適当に座った。奴も後から俺の隣に座る。



「あのさ、欝陶(うっとう)しいんだけど」



俺は立ち上がると、腰掛けに座っている死神に向かって言った。



「じゃあテスト受けるって言え」

「嫌だ」



「即答かよ」と死神は苦笑する。



「っていうか、何で俺なんだよ……他の奴らをあたればいいじゃないか」

「だから前にも言っただろ、才能があるって。お前は諦めるには惜しい人材なんだよ。」



そんな才能いらないのに。


続けて死神は自信に満ちた表情で言った。



「まあいい、お前は時期にテストを受けざる終えなくなる」

「……どういう意味?」

「時期にわかるさ、時期に……。」



やつは不敵な笑みを浮かべると、また黒い炎に身を包み消えてしまった。