「小姑は酷いな。せめて九官鳥だって。」

「九官鳥? なんで?」

「九官鳥はうるさいけど、そこに可愛い気があるだろ? 俺みたいに。」



姉さんは「意味わかんないって」と言うと腹を抱えて笑った。


こんな彼女の笑顔とも、別れがすぐそこまで迫っている事に この時俺は夢にも思わなかった。


それははまるで獲物を狙う獅子のように。

姿勢を低く足音を立てずに、ゆっくりとしかし確実に死という名のそいつは迫っていた。


草村から飛び出して牙を剥き出すその瞬間を、俺達は知るよしもなかった。




――ただ一人を除いては。