イノセント・ラヴァー *もう一度、キミと*

紛れもなく、美咲姉ちゃんだった。


(……美咲姉ちゃん!)


頭ではわかっていても。

実際にその姿を見ると、信じられない思いでいっぱいになる。


ほぼ5年ぶりに見る、動いている美咲姉ちゃんの姿。

最後に見たのは、棺の中に声もなく横たわる姿だったから……


目がじわっとうるんで、涙がこぼれ落ちそうになるのをあわててぬぐった。

あたしは電柱の影から飛び出したい気分を必死で抑えながら、なりゆきをかたずを呑んで見守る。


よっこらしょ、と美咲姉ちゃんが後部座席に乗り込んで。

運転席に回ったお母さんが、ぶぉぉん、とエンジンをかけた。

きっと産婦人科へ行くんだ。


(これできっと助かる。大丈夫)


祈るような思いで懐かしい車をじっと見送ったあたしは、逆向きに光る矢印を指でなぞった。


(お願い。どうか、無事でいて――)


---------