あたしはしっかり拓海を抱きしめて、指を伸ばして日付をセットした。


----


おそらく、妊娠2ヶ月くらいの時期だと思う。

あたしは拓海の手をしっかり握って、例のマンションに向かってた。


白いリストバンドは、難なくあたしたち二人をいっぺんに、過去にいざなってくれた。


吐く息が白くなる冷たい空気のなか、よたよた歩きながら。

何が起こってるのかわからない拓海は、澄んだ目でときどきあたしを見上げてた。



マンションに着くと、あたしは迷わずインターフォンを鳴らす。


「はい」

だるそうな声。

「あたしよ」

「……」


インターカムをのぞき込むあたしに、返ってきたのは無言。

長い沈黙の後、疲れたような声がした。


「ちょっと降りるわ」