そこに居たのは、間違いなくマッスで別れたナル男だった。あの時と同じ服装、同じ顔で何故かうちの玄関に立っている。 私の選択肢は二つ。一つは両親の喧嘩を宥める、二つは…逃げる。最良の選択はおそらく後者だ。 「あれ…君は――」 敵前逃亡をはかる前に、私はナル男君の目に止まってしまったようだ。思わず肩がビクッと震えたのが分かる。 「豊、荷物まとめたなら家を出るからね」 「いえ、ですから…」 押し問答する親よりも何よりも、私はいの一番にこの場を去りたい。あとはご自由にどーぞと言ってしまいたい。