食卓に並んだコロッケの山。母は和食が好きだ。でも父が戻る時は、必ず父の好物であるコロッケが食卓に並ぶ。中でも母の作るカニクリームコロッケは最高だ。

「いただきま…」

ピンポーン

「静二さん!?」

聞くよりも早く駆け出した母に、思わず出した箸を下ろして立ち上がる。私も早く父さんに会いたい。

「お父さんおか…」

「何処でこさえてきた子だーいっ!このバカ夫がー!」

鼓膜がビリビリとなる大きな怒声が聞こえてきた。

……………何?

廊下へと繋がる扉を少し開け、玄関へ迎えに行こうとしていた足が止まる。

「いや、真琴さんこれは――」

「豊っ!荷物まとめて来なっ!こんなアホだとは思わなかった。そこの子もあたしが引き取る」

「目が真剣ですね、真琴さん…いえ、ですから彼は――」

珍しく興奮した母と、動揺する父の声。夫婦喧嘩なんてしたためしのない二人が、何だか不穏な会話をしている。此処は、あたしが突っ込んでいって落ち着かせるものなの?ってか、この廊下に出たらとんでもない事が起こりそうな気がする。喧嘩が原因ではない。ただ、嫌な予感が胸中を占めていた。

「あの、僕は静二さんと血縁じゃありません」

ん?

「庇うこたぁないよ、こんな男を庇うだけ無駄だよ」

「いえ、ホントに…僕にはちゃんと両親が居ますし、ちゃんと血が繋がってます」

お願いっ

どうか、私の予感が間違ってますように――

そう思いながら、ソッと廊下へ足を踏み出す。えてして、そう言う予感は外れないもの。私は二度目の衝撃うける事となるのだ。