「(あ~、もうっ!!間に合わんっ)」





鳥の鳴き声と、微かに聞こえる車の音。
誰もいない、静かな無人駅に向かって、私はひたすら走っていた。





「(これに乗り遅れたらまた30分も待たなあかんのに!!)」





向かい風が、私のスカートと髪を揺らす。せっかくのお洒落は無駄なものとなってしまった。





30分に一度しか来ない電車。
見渡す限りの山と田んぼ。鳥の鳴き声や、夏の虫の鳴き声。





ここは、大阪なんかとはぐっと離れた、静かな田舎。
そんなところにうち、―――中澤綾音は住んでる。





修学旅行で行った初めての都会、この日本の中心地である東京の町では、ビルの高さと人の多さに腰を抜かしてしまった。