フェイス

「僕に、手を下すの?」


 彼は険しい表情で私を見た。

 私達が学校の秩序を乱す者をこらしめてきたのを知っているかのようだった。

 全てあの男の手柄になってきたはずのことを。

 でも、最早、それもどうでもいいのかもしれない。


「あなたは私を怒らせた。二度目はない」


 この数年間、築き上げてきた全て崩れ去ってしまった。

 平穏、傷付かない距離が。

 粉々に、今度こそ修復不可能に。

 そればかりは瞬間接着剤でもくっつかないし、電子レンジでも温め直せない。

 けれど、土にも還ってくれない。