フェイス

「彼は誠実な男じゃない」


 それは普段から私が言っていること。

 でも、他人に言われるのは違う。


 なぜ、好き勝手なことを言われなければならないのか。

 私がどんな思いであの男に仕えていたかも知らない男に。

 私の中で許せない思いが強くなっていく。


「あなたは何も知らない。それに、たとえ、必要とされていなくとも、あの人に仕えることが私の信義だから。それ以上、言うなら私も黙っているつもりはない」


 忠誠、誓ったのは一方的だった。

 私が勝手に結んだ契約。

 あの男は「しょーがねーな」と頭を掻いていた。

 けれど、今もそれを覆すつもりはない。