フェイス

「君はあの男に騙されているんだよ」

「騙されてる?」


 何をしても全く不思議じゃない。

 あらゆる無茶を通してきたんだから。


「彼、3年B組のイトウ先輩と付き合っているんだ」

「それが何?」


 私は彼の中で話がねじ曲がっていることに気付いた。

 あの男のそういう噂はいくらでもある。

 イトウ先輩なんて聞いたことはなかったけど。


 でも、私に関係のあることじゃない。

 あの男が誰と付き合おうと、時永家への忠義は忘れない。

 こんな時代にはそぐわないと言われても。

 それでも、春平も同じだと信じている。

 そう思いたいだけなのかもしれないけれど。