フェイス

「今日は、腕章、してないんだね」


 彼はちらりと私の左腕を見た。

 いつもそこにあった腕章がない。


「辞めたから」


 本当は辞めさせられた。

 でも、そんなことはどうでも良かった。


 問題は彼が私に声をかけてきた意図。

 一応、今まで時永に仕えてきた者として、勘は鈍くないと思っている。


「そう……良かった」


 彼は笑った。

 ほっとしたように、ひどく穏やかに。