フェイス

 昼休み、私と春平はそれぞれパトロールに出た。


 クビにされても誰かがやらなければならない。

 校内の平和を守るため。

 そして、それができる人間は私と春平しかいない。

 あの男にはそんなことはできないし、させられない。


「永添さん」


 不意に呼ばれて振り返る。

 一通りパトロールを終えて、教室に戻ろうとした時だった。


 眼鏡の男子、真面目そう。

 見覚えはあるかわからなかった。

 当然、名前もわからない。


 でも、相手は私を知っている。

 私達は有名人扱いではあるけど、いい気持ちはしない。

 残念なことに、私はあの男みたいに目立ちたがる性分じゃない。

 目立たない方がいい。

 私は目立ってはいけない。