フェイス

「知らねぇ!」


 “あの男”は叫ぶわけで……

 知ってるの、知らないの、どっちなの。


「大体、路頭に迷いそうなポチを泊めてあげたのも俺だし、本当、感謝してほしいよね。今回の痴話喧嘩で俺がどれだけのものを失ったと思ってるのさ」

「俺を思いっきり犬小屋に入れようとしたくせによく言えますよね」


 痴話喧嘩は違うと言いたかったけれど、即座に春平が噛み付いたせいで言えなかった。