フェイス

「あれ? なんかいい感じじゃないですか? 傷心のシミズ先輩」


 “あの男”とぎゃあぎゃあ言い合っていた春平が口を挟んできた。

 春平はいつも智也先輩をそう呼ぶ。

 清水じゃなくて、清永だってわかっているのに、わざと。


「シミズって言うな。あ、傷心のポチは羨ましいのかな?」

「う、羨ましくなんかねぇよ!」


 ニヤッと智也先輩が笑って、春平が反論したけれど、羨ましがっているのがバレバレ。


「ほらほら、そっちには可愛い子、いるじゃん」


 智也先輩がまりちゃんを指さした。