「あなたが何を恐れるの? そんなに私は重かった?」


 この男に恐れるものはないはず。

 でも、恐れるとしたら、御祖父様への恩を理由に付きまとう私とか。

 言った瞬間、デコピンされた。


「ちげーよ、俺は俺が怖かったんだよ」


 額を押さえる私に時永はやっぱり少し聞き取り難い声で言った。


「お前のこと、好きすぎる自分が嫌だった」

「そんなに私は苦痛だったの? そんなに嫌いだった?」


 好き、それは本当なの?

 でも、嫌だったってことは好きじゃないってこと?