「この辺り、宿ないから。森を抜けたらでかい街なんだけど、今から森を抜けるのは無理だ。悪いけど、森んなかで野宿でいいか?」 ほら、とルトは腰から下げている袋を見せる。 …きっと、中には小さなテントが入っている。 私はこくん、と頷いた。 彼に手を引かれ、ゆっくりと森の中へ歩いていった。 * 「…よし、できた」 頭上の木々の隙間が大きくあき、月の光が強く当たる場所に、ルトはテントを張った。 目の前の群青のテントは、月光に照らされ、存在感を放っている。