月夜の翡翠と貴方



「……私、壺とか花瓶とかたくさん割っちゃったから」

マテンの目の前で、高級そうなものをたくさん。

「あらら…」

正直、死ぬつもりだった。

…というのは、言わないでおこう。

マテンに、直接刃物を向けてしまったことも、彼の怒りに繋がっているのだろう。


玄関を見ると、話し声はよくわからないが、ミラゼが丁寧に挨拶をしている。

女は戸惑ったように慌て出すと、主人を呼びに行くのか、屋敷のなかへと戻っていった。


「…なぁ、ジェイド」


様子を見ながら、ルトが小さく言った。

「…なに?」

「屋敷のなかにいたとき、なに考えてた?」

…なに、とは。

…もう、ひとつしかないのだが。


「…ルトのこと考えてたよ」


もう素直に言うことを、躊躇う必要は、ない。

今までは、踏み込みすぎないように、耐えていたけれど。

もう、その必要は、ないのだ。