捕らえられたら、 諦める。 無駄な抵抗などしないし、逃げようと企てもしない。 ただ、生きていく。 それだけのために、耐える。 それが『私』だった。 けれど、夢のなかでナタナが言った。 『今も、それができるのか?』 自分の頬に、手を当てる。 濡れていた。 涙のあとがある。 何故? ナタナの邸でも、泣いたことなどなかったのに。 あの人に会ってから、私は泣いてばかりだ。 感情が溢れ出すのを、止めることができない。 耐えていれば、落胆して苦しくなることもないのに。