月夜の翡翠と貴方



昨日の私には、今のこの状況など想像もしていなかっただろう。

こんなに多くの人がいる場で、フードをとっている自分にも。

ルトは被っていてもいい、と言ったが、本意はとっていて欲しい、だ。

被っていても、どうせ隣のルトによって、道ゆく女達の視線を浴びるのだ。

それならば隣の自分は、フードを目深に被る怪しい女より、堂々としていたほうがよっぽど変に目立たなくていいだろう。

そう判断して、私は一日フードをとって過ごした。

当然老若男女視線を浴びたが、慣れていることである。

今更、もう気にもしない。

今だって、周りからちらちらと好奇の視線を浴びているのだし。