月夜の翡翠と貴方



…なにが、ごめん、だ。


どうして、今更。

どうして今更、あんな笑みを向けてくるの。

どうして。どうして。


「…………っぅ…」


これ以上、私をかき乱すのはやめて。

私のなかを、支配するのはやめて!

ずるい、ずるい!

私は、貴方のいない檻のなかで、生きていかなければ、と思っていたのに。

耐えなければと思っていたのに…!


ずるい、ずるいよ。

ルトは、最低だ。

嫌い、嫌い。

あんな貼り付けた笑顔、大嫌い。


それなのに、私の心は未だに愛しいと感じてる。

彼のことも、その自嘲したように、『ごめんな』といった微笑みも。

声色も、全て。

愛しくて、大好きで。


もう、ぐちゃぐちゃだ…!



「…ジェイドさん」

後ろのほうで、男の声がする。

「………はい」

震えた声で返事をすると、男は「行きましょう」と言った。