月夜の翡翠と貴方



「シズどのは、これからどうするのだ?」

「…どうする、とは?」

「別の依頼が入っているのか」

…別の、依頼。

ルトは、「いや、まだ」と苦笑いを浮かべた。

「…しばらくは、ひとりでのんびりしようかな、と」

「そうか」

…ルトは、きっと普段通りの生活に戻るのだろう。

私と一緒にいた一ヶ月ほどの期間なんて、きっとすぐに忘れる。


ルトとマテンが談笑している間、私は黙ってマテンの隣に立っていた。

…昨日まで、隣にいた人。

それが、今はこんなに遠くに感じる。

名前ごと、まるで知らない人のように。


しばらくして、ルトが席を立った。

「じゃあ」

ルトが微笑んで、扉の方へ歩いてくる。

…もう、会わない。

絶対に、もう、会えない。

マテンが席を立つのと、ルトが私の横を通るのは、ほぼ同時だった。