月夜の翡翠と貴方



今の自分は、ひどく滑稽に感じた。

私が愛しいと感じるひとによって、私は今、違う人間に愛でられている。

けれど悲しいほどに、恨みがましい気持ちは、出てこなかった。

…悲しいだけ。

ひたすらに、悲しいだけなの。


マテンは満足したのか、しばらくして私から手を離した。


「…ジェイド、という名は、シズどのがつけたそうだな」

ちら、と上目でルトを見る。

ルトは、穏やかな表情を崩さずに、マテンを見ていた。

…ルトは、今何を考えているのだろう。

心の中はそんな思いばかりで、けれど苦しいことには変わりなくて。

「…ええ」

「翡翠玉からだろう?ぴったりな名前ではないか。この名を、そのまま使う事にしたよ」

「…ありがとうございます」


…どうやらマテンは、翡翠葛のことを知らないようだ。

珍しい植物ではあるから、仕方ないとは思うけれど。

私が知っていたのは、幼い頃家にあった植物に関する文献を、読んでいたからだ。


…ああ、そういえば。

翡翠葛の花言葉は、なんだったか。

なんて、呑気なことが頭を巡る。

…そうでもしないと、涙が出そうだ。